下肢静脈瘤の手術

下肢静脈瘤の治療について

手術風景下肢静脈瘤が重症化して血栓性静脈炎や潰瘍が生じたりする場合には、手術で治療します。
根本的治療では血液の逆流を起こしている血管を取り除きます。血管そのものを抜去するストリッピング手術と高周波で血管を焼き固めてしまう血管内焼灼術などの方法があります。

身体に負担の少ない血管内焼灼術

高周波による焼灼術血管内焼灼術は静脈瘤の原因となる血管を内側から、レーザー光や高周波の熱を利用して焼いて塞いでしまう方法です。焼かれた血管は線維化され、時間がたつと体内に吸収されていきます。この治療はもともとは自費診療で高額なものでしたが、2011年に初めて厚生労働省に薬事承認され、保険適用となりました。ただし保険診療として行うためには、「下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術の実施基準による実施施設」、及び「下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術の実施基準による実施医、または指導医」の認定が必要となります。当病院ではこれらの条件を満たしております。

高周波による焼灼術

静脈内に細いカテーテルを入れ、高周波(ラジオ波)を流すことで血管を焼く治療法です。2014年に薬事承認され、保険適用となっています。
高周波で焼かれて閉塞した血管は数ヵ月かけて線維化し吸収されて消えます。局所麻酔で行われ、患者さんの負担も軽いので日帰り手術も可能です。当院では、下肢静脈瘤手術は基本的には局所麻酔と静脈麻酔を併用して1泊2日の入院手術を行っています。
術後の痛みや腫れ、皮下出血が少なく、神経障害などの後遺症もほとんど見られません。気になる効果はストリッピング手術と同等です。
患者さんの負担が小さい血管内治療ですが、高周波治療だけではボコボコした血管の膨らみ(とくにふくらはぎ)が解消しないことがあります。4割の静脈瘤はいずれ消えてなくなるといわれていますが、手術直後は残っていて目立つ場合があります。ボコボコがひどい場合には同時に静脈瘤切除術を行うことがあります。
また、機器の仕様で7cmのカテーテルで一気に焼くため、ごく狭い範囲の病変の治療には向いていません。

その他下肢静脈瘤の手術

血管内焼灼術以外にも、患者様の適応を判断し最適な治療を提供いたします。原則、手術は1泊の入院となりますが、硬化療法は外来で受けられます。

ストリッピング手術(伏在静脈抜去術)

脚の付け根と膝の内側の2ヵ所で皮膚を切開し、弁不全を起こしている伏在静脈にストリッパというワイヤーを入れます。全身麻酔や下半身麻酔が必要なために入院が必要となります。これを引き抜くことで静脈を抜去します。古くから行われている治療法で、再発率が低いことが大きなメリットです。デメリットとしては、術後、痛みを感じたり、皮下出血、神経障害などの後遺症が出たりすることがあります。

最近では超音波を使ったドプラ血流検査、カラードプラ検査の高い精度によって、逆流を起こしている血管範囲が明瞭にわかるようになったため、逆流のある部分のみを選択的に抜去することが可能になり、手術に伴う神経損傷を軽減することができるようになってきました。

 

静脈瘤切除

ストリッピング手術や血管内治療の際に、術後、とくにふくらはぎ部分ではボコボコした静脈瘤が消えないことがあります。それを回避するために静脈瘤に小さな切開創をつくり、静脈瘤を摘出します。高周波治療と組み合わせて行うことで、1回の治療で静脈瘤の完治が期待できる治療法です。

硬化療法

静脈瘤が起こっている静脈に硬化剤を注入し、薬剤が流れてしまわないようにストッキングや弾性包帯で静脈瘤を圧迫し静脈瘤を潰します。硬化した血管は次第に萎縮して消えます。施術は10分程度で終わります。針を刺すだけなので、傷跡も残りません。
硬化剤を注入したところに色素が沈着して変色することがあります。また、術後にはしこりや痛みが残ることもあります。軽度の下肢静脈瘤には有効ですが、重症化したケースでは効果が期待できないケースもあります。硬化法だけでは弁不全による逆流を改善できないため、すぐに再発します。

高位結紮術

結紮(けっさつ)とは、糸などで結ぶことをいい、とくに止血などのために血管をしばることを指していいます。下肢静脈瘤は脚の付け根の静脈の弁が壊れて血液が逆流することが多く、これをしばって切り離し逆流を止める治療法です。
局部麻酔の簡便な手術で済みますが、数年後に再発することが多いようです。

下肢静脈瘤手術のリスク

手術リスク下肢静脈瘤手術では以下のような合併症が起こるリスクがあります。

  • 皮下出血や血腫
  • 大腿部の疼痛
  • 突っ張り感
  • しびれや無知覚などの神経障害

とくに血管内焼灼術では皮膚熱傷のリスクがあるほか、まれに深部静脈血栓症、ごくまれに肺塞栓症を起こすリスクがあるといわれています。

手術後の経過

当院では、下肢静脈瘤手術は基本的に局所麻酔と静脈麻酔の併用による1泊2日の入院手術を行っています。手術当日に入院していただき、手術終了後は病室で術後の処置を行います。回復の程度によって歩行の訓練を行います。手術翌日にガーゼ交換後、退院となります。
退院後は3週間程度、弾性ストッキングの着用が必要です。1週間後に外来で経過を診察し、その後1ヵ月後に再び経過観察を行います。静脈瘤が残っている場合には硬化療法を追加で行うことがあります。
結紮手術、血管内焼灼術では患者さんのご希望があれば日帰り手術を行います。

保存的治療

下肢静脈瘤では、軽症でとくに症状がない場合、見た目が気にならない場合などは治療の必要はありません。ただ、症状がなくても放っておけば年々悪化します。薬による治療法はなく、静脈瘤の存在が気になる方には保存的治療、重症化した際には手術による治療を行います。

医療用弾性ストッキング着用

下肢静脈瘤専用のストッキングを着用します。脚全体を強い力で圧迫することで、表在静脈の逆流を抑え、深部静脈の血流をサポートします。保存的治療なので病気、症状が完治するわけではありませんが、ストッキングの着用で症状が軽減することがわかれば、表在静脈の逆流が原因であると診断を下すこともできます。
逆流する部位に合わせてパンストタイプ、ストッキングタイプ、ハイソックスタイプを選択します。

メリット
  • はくだけでOKなので簡便で続けやすい
  • 1足4,000~5,000円程度と比較的低価格
デメリット
  • 根本治療ではない
  • はいている間しか症状軽減の効果はない
  • 夏は蒸し暑い
  • 自分に合ったサイズがない場合がある
  • 腕の力が弱いとはけない
注意点
  • 長時間の立ち仕事はできるだけ避ける
  • 休憩時間は脚を心臓より高くして休むか、足踏みしたり歩き回ったりする
  • 就寝中はクッションなどで脚を高くして寝る

治療費用

診察内容 3割負担の場合 1割負担の場合
高周波治療(片足) 約45,000円 約15,000円
ストリッピング手術(片足) 約40,000円 約13,000円
硬化療法 約6,000円 約2,000円
静脈瘤切除 約5,000円 約1,800円

※標準的な治療を行った場合のおおよその目安額となります。
※入院代や薬代、弾性ストッキングの料金は含まれていません。
※自己負担率や保険の種類により窓口での支払額は異なりますので、詳細はスタッフまでお問い合わせください。

TEL:042-464-1511初めての方へ
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